財務会計上、企業グループとしての財政状態や経営成績を開示する場合、企業グループを表す用語として「関係会社」ということばが用いられます。
ある会社の関係会社とは、当該会社の「親会社、子会社及び関連会社並びに財務諸表提出会社が他の会社等の関連会社である場合における当該他の会社等(その他の関係会社)」をいいます。(財務諸表等規則 第8条 第8項、会社計算規則 第2条 第3項 第25号)
「親会社」「子会社」「関連会社」「その他の関係会社」は、企業グループ内の会社を「支配-被支配」の関係から分類したものです。
これらの用語は法律や規則により詳細に定義されていますが、ある会社が上場準備会社の子会社(親会社)や関連会社(その他の関連会社)であるかどうかについては、実質的な支配関係の存在やその強さなど、専門的な判断を必要とします。
そして判断の結果は、①連結決算の実施や連結の範囲、②関係会社管理の対象と管理方法、③上場申請書類への記載内容等に大きな影響を与えます。
したがって上場準備の初期の段階で、監査法人や主幹事証券と関係会社の範囲について十分な協議を実施することが重要となります。
(親会社及び子会社の定義)
法令 |
財務諸表等規則 |
会社法 |
親会社 |
第8条 第3項 他の会社等の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(「意思決定機関」)を支配している会社等 |
会社法 第2条 第4号 会社法施行規則 第3条 第2項 ・株式会社を子会社とする会社 ・他の会社の財務及び事業の方針の決定を支配している会社 |
子会社 |
第8条 第3項 ・親会社に支配されている会社 ・親会社及び子会社又は子会社が、他の会社等の意思決定機関を支配している場合における当該他の会社等も、その親会社の子会社とみなされます |
会社法 第2条 第3号 会社法施行規則 第3条 第1項 ・他の会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社 ・他の会社に財務及び事業の方針の決定を支配されている会社 |
他の会社を支配しているとは? 財務諸表等規則 第8条 第4項 会社法施行規則 第3条 第3項 |
1 他の会社等の議決権の過半数を自己の計算において所有している会社等(民事再生法の再生手続開始の決定を受けた会社等であって、かつ、有効な支配従属関係が存在しないと認められる会社等を除く) 2 他の会社等の議決権の40%以上、50%以下を自己の計算において所有している会社等であって、かつ、次に掲げるいずれかの要件に該当する会社等 イ 自己の計算において所有している議決権と自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者及び自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権とを合わせて、他の会社等の議決権の過半数を占めていること。 ロ 役員若しくは使用人である者、又はこれらであつた者で自己が他の会社等の財務及び営業又は事業の方針の決定に関して影響を与えることができる者が、当該他の会社等の取締役会その他これに準ずる機関の構成員の過半数を占めていること。 ハ 他の会社等の重要な財務及び営業又は事業の方針の決定を支配する契約等が存在すること。 ニ 他の会社等の資金調達額(貸借対照表の負債の部に計上されているものに限る。)の総額の過半について融資(債務の保証及び担保の提供を含む)を行っていること(自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係のある者が行う融資の額を合わせて資金調達額の総額の過半となる場合を含む。)。 ホ その他、他の会社等の意思決定機関を支配していることが推測される事実が存在すること。 3 自己の計算において所有している議決権と自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者及び自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権とを合わせた場合(自己の計算において議決権を所有していない場合を含む。)に他の会社等の議決権の過半数を占めている会社等であって、かつ、前号ロからホまでに掲げるいずれかの要件に該当する会社等 |
(関連会社及びその他の関係会社)
法令 |
財務諸表等規則 |
会社計算規則 |
関連会社 |
第8条 第5項 会社等及び当該会社等の子会社が、出資、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、子会社以外の他の会社等の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる場合における当該子会社以外の他の会社等 |
第2条 第3項 第21号 会社が他の会社等の財務及び事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる場合における当該他の会社等(子会社を除く) |
その他の関係会社 |
第8条 第8項 他の会社を関連会社とする会社 |
第112条 第4項 第4号 他の会社を関連会社とする会社 |
出資、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、子会社以外の他の会社等の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができるとは?
財務諸表等規則 第8条 第6項 会社計算規則 第2条 第4項 |
1 子会社以外の他の会社等の議決権の20%以上を自己の計算において所有している場合(民事再生法の再生手続開始の決定を受けた会社等であって、かつ、当該会社等の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができないと認められる会社等を除く) 2 子会社以外の他の会社等の議決権の15%以上、20%未満を自己の計算において所有している場合であって、かつ、次に掲げるいずれかの要件に該当する場合 イ 役員若しくは使用人である者、又はこれらであつた者で自己が他の会社等(子会社を除く)の財務及び営業又は事業の方針の決定に関して影響を与えることができる者が、当該他の会社等の代表取締役、取締役又はこれらに準ずる役職に就任していること。 ロ 他の会社等(子会社を除く)に対して重要な融資を行っていること ハ 他の会社等(子会社を除く)に対して重要な技術を提供していること ニ 他の会社等(子会社を除く)との間に重要な販売、仕入れその他の営業上又は事業上の取引があること。 ホ その他子会社以外の他の会社等の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができることが推測される事実が存在すること。 3 自己の計算において所有している議決権と自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者及び自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権とを合わせた場合(自己の計算において議決権を所有していない場合を含む)に子会社以外の他の会社等の議決権の20%以上を占めているときであって、かつ、前号イからホまでに掲げるいずれかの要件に該当する場合 4 複数の独立した企業(会社及び会社に準ずる事業体をいう)により、契約等に基づいて共同で支配される企業(共同支配企業)に該当する場合 |
関連項目:記載すべき子会社、支配株主等、特別利害関係者等、人的関係会社、資本的関係会社、親会社等に関する開示制度