一般的には、プライシングとは価格を決定することをいいます。
上場時ファイナンスにおけるプライシングとは、公開価格(発行価格または売出価格)を決定することをいいます。
新規上場時のファイナンスでは、通常、ブックビルディング方式により公開価格を決定します。
公開価格決定までのプロセスは概ね以下のとおりです。
(注)2022年2月の「「公開価格の設定プロセスのあり方等に関するワーキング・グループ」報告書」(日本証券業協会)の内容を受け、「主幹事証券会社が、想定価格、仮条件又は公開価格の提案に際し、その根拠を発行会社等へ説明すること」が、従来以上に求められるようになりました(有価証券の引受け等に関する規則 第26条) 。
(公開価格決定のプロセスの概要)
① 想定価格の決定(注)
・有価証券届出書提出時には公開価格は未定であるため、その時点で会社が想定している公開価格(想定価格または想定仮条件と言います)を決定し、有価証券届出書に記載します。
・主幹事証券は、発行会社の事業内容・利益計画の検討、類似会社との比較等を行った上で決定した価格帯を会社に提示し、発行会社は、主幹事証券会社と協議のうえ、想定価格を決定します
(注)公募に関する想定価格を「想定発行価格」、売出に関する想定価格を「想定売出価格」と区別して呼ぶことがあります。上場時に公募と売出を同時に行う場合、両者は同じ株価になります。
② ロードショー、プレ・マーケティング→仮条件価格帯の決定
発行会社は、有価証券届出書提出後に機関投資家を訪問し、目論見書等を用いて事業内容等の説明を行います。
主幹事証券会社は、機関投資家から、発行条件に対する意見聴取(プレ・マーケティング)を行います。
発行会社は、機関投資家からのフィードバックを判断材料として、主幹事証券会社と協議のうえ、ブックビルディングの仮条件価格帯を決定します。
③ ブックビルディング→公開価格の決定
決定された仮条件価格帯を前提として、引受証券会社は投資家の需要状況の調査(ブックビルディング)を行います。
発行会社は、調査の結果を判断材料として、主幹事証券会社と協議のうえ、新株発行または売出しの価格(公開価格)を決定します。
(注)日本証券業協会のウェブサイトでは、直近のIPO案件について、主幹事証券会社、発行・売出規模ごとの平均収益率(対公開価格)を公表しています。
(平均収益率は、「初値」、「上場30日後」、「上場90日後」、「上場180日後」、「上場360日後」について集計しています)