配当性向とは、会社がある事業年度に獲得した利益のうち、配当として株主へ還元する割合をいいます。
具体的には、以下の算式で計算します。
配当性向(%)=1株当たり年配当金÷1株当たり当期純利益×100
算式のとおり、配当性向が高いほど株主への還元(株主のインカムゲイン)は大きくなるため、基本的な考え方として、配当性向が高いほど株主にとって好ましいといえます。
ただし会社が獲得した利益は、会社の成長のための投資の原資になりますので、利益をすべて配当するのではなく、投資資金にまわし、その結果としての会社の成長=株価の上昇(株主のキャピタルゲイン)によって、株主に還元するという考え方も必要です。
したがって実際に配当額を決定する際には、長期的な成長戦略を策定し、投資計画や利益計画などとのバランスを勘案する必要があります。
(成長性が高く、当面の資金ニーズが大きい会社では、利益をすべて次期以降の投資へ回すために、配当を実施しないケース(配当性向=0%)もあります。)
上場申請書類であるⅠの部では、いわゆるハイライト情報のうち「提出会社の経営指標等」に、過去5年間の会社の配当性向を記載します。
また、【提出会社の状況】の「配当政策」には、会社の配当に対する基本方針を記載します。
(連結配当性向について)
配当性向はもともと会社単体の利益と配当額との関係を示す指標です。
しかし、会社が自社だけではなく、子会社等も含めた企業グループとして活動するようになると、配当性向にも連結決算の考え方が採用されるようになりました。(注)
連結配当性向は、以下の算式で計算します。
連結配当性向(%)
=親会社の1株当たり年配当金÷1株当たり親会社株主に帰属する当期純利益×100
(注)連結配当性向の考え方を採用するためには、自社の配当原資とするために、子会社や関連会社が獲得した利
益をどれだけ吸い上げるかについても検討する必要があります。
(連結配当規制適用会社)
株式会社は会社の財産を無制限に配当することはできません。会社法では会社債権者の利益を保護するため、配当することができる額(分配可能額)を原則として剰余金の額に自己株式について必要な調整を行った金額までとしています。(会社法第461条)分配可能額も配当性向と同様、もともと会社単体の観点からの規制でしたが、会社が企業グループとして活動する実態を反映して、現在では連結計算書類作成会社は会社の判断により、連結ベースでの分配可能額の計算を行うことができます。
連結ベースでの分配可能額の計算を行うことを決定した会社を「連結配当規制適用会社」といいます。(会社計算規則第2条 第2項 51号)
連結配当規制適用会社の分配可能額の考え方は、単体の分配可能額より連結ベースでの分配可能額が小さい場合には、連結ベースで分配可能額を採用するというものです。(会社計算規則第158条 第1項 第4号)
なお、連結配当規制適用会社は個別注記表において、連結配当規制適用会社である旨を注記しなければなりません。(会社計算規則 第98条 第1項 第18号)