事業報告とは、株式会社が会社法の規定に基づき事業年度ごとに作成する「株式会社の状況に関する重要な事項」等(注)についての文章による報告書です。(会社法 第435条 第2項、会社法施行規則 第118条)
(注)計算書類及びその附属明細書並びに連結計算書類の内容となる事項を除
く。
監査役設置会社では、事業報告及びその附属明細書(以下、「事業報告等」)は、監査役の監査を受けなければなりません。(会社法 第436条 第1項、第2項)
また、取締役会設置会社では、事業報告及びその附属明細書は取締役会の承認を受けなければなりません。(会社法 第436条 第3項)(注)
(注)監査役の監査を受けている場合には、監査を受けた事業報告等を承認。
(事業報告の株主への提供)
取締役会設置会社の事業報告は、取締役会の承認を受けた上で、定時株主総会の招集通知の添付書類として株主に提供されます。(会社法 第437条)
(注)有価証券報告書提出会社の事業報告は、EDINETで閲覧することができます。(有価証券報告書(HTML版)の添付文書)
(事業報告の構成)
① 事業報告には、以下の事項を記載しなければなりません。(会社法施行規則 第118条)
・会社の状況に関する重要な事項(計算書類及びその附属明細書並びに連結計算書類の内容となる事項を除く)
・内部統制システム(会社法 第348条 第3項第4号 等)の決議内容の概要(決議している場合)及び内部統制シ
ステムの運用状況の概要
・会社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針を定めている場合には、当該方針に関
する事項(たとえば、買収防衛策に関する事項)
・特定完全子会社に関する情報
・親会社等との一定の取引について
イ 当該取引をするに当たり当該株式会社の利益を害さないように留意した事項(当該事項がない場合にあ
っては、その旨)
ロ 当該取引が当該株式会社の利益を害さないかどうかについての当該株式会社の取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会。)の判断及びその理由
ハ 社外取締役を置く株式会社において、ロの取締役または取締役会の判断が社外取締役の意見と異なる場合には、その意見
② 会社が公開会社である場合や、会計監査人設置会社である場合には、より詳細な記載が求められます。(会社法施
行規則 第119条、同 第126条 他)
③ 会社が、公開会社や会計監査人設置会社でない場合の事業報告の内容は、上記①(通則)に従えばよく、その中心
となる「会社の状況に関する重要な事項」の内容について、特に決まりはありません。
しかし上場準備会社の場合は、今後、公開会社となることを予定していますので、会社法における必須事項の記載
に留まらずに事業報告を作成することが望ましいとされております。
特に直前事業年度の事業報告については、上場前の最終トライアルとして公開会社に準じた様式での事業報告を作
成することをおすすめします。
(参考1)事業報告及び計算書類の監査報告の通知期限
●事業報告及びその附属明細書
特定監査役→特定取締役へ |
以下のうちいずれか遅い日 ・ 事業報告を受領した日から4週間を経過 した日 ・ 事業報告の附属明細書を受領した日から 1週間を経過した日 ・ 特定取締役及び特定監査役の間で合意し た日 |
会社法施行規則 第132条 第1項 |
●各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書(会計監査人設置会社以外)
特定監査役→特定取締役へ |
以下のうちいずれか遅い日 ・計算書類の全部を受領した日から4週間 を経過した日 ・計算書類の附属明細書を受領した日から 1週間を経過した日 ・特定取締役及び特定監査役が合意により 定めた日があるときは、その日 |
会社計算規則 第124条 第1項 第1号 |
●計算書類及びその附属明細書(会計監査人設置会社)
会計監査人 →特定監査役 →特定取締役 |
各事業年度に係る計算書類等 以下のうちいずれか遅い日 ・計算書類の全部を受領した日から4週間を 経過した日 ・計算書類の附属明細書を受領した日から1 週間を経過した日 ・特定取締役、特定監査役及び会計監査人 の間で合意により定めた日があるとき は、その日 連結計算書類 連結計算書類の全部を受領した日から4週 間を経過した日(特定取締役、特定監査役 及び会計監査人の間で合意により定めた日 がある場合にあっては、その日) |
会社計算規則 第130条 第1項 第1号、第3号 |
特定監査役 →特定取締役 →会計監査人 |
連結計算書類以外の計算書類関係 以下のうちいずれか遅い日 ・ 会計監査報告を受領した日から1週間を経 過した日 ・ 特定取締役及び特定監査役の間で合意に より定めた日があるときは、その日 連結計算書類 会計監査報告を受領した日から1週間を経 過した日(特定取締役及び特定監査役の間 で合意により定めた日がある場合にあって は、その日) |
会社計算規則 第132条 第1項 |
(参考2)公開会社等の事業報告の記載内容
1. 公開会社における事業報告の内容(会社法施行規則 第119条)
株式会社が当該事業年度の末日において公開会社である場合には、次に掲げる事項を事業報告の内容に含めなけ
ればなりせん。
項目 |
記載内容 |
株式会社の現況に関する事項 (原則として部門別に記載) |
・主要な事業内容 ・主要な営業所及び工場並びに使用人の状況 ・主要な借入先及び借入額 ・事業の経過及びその成果 ・資金調達、設備投資の状況等(重要なものに限る) ・直前3事業年度の財産及び損益の状況 ・重要な親会社及び子会社の状況 ・対処すべき課題 ・その他会社の現況に関する重要な事項 |
株式会社の会社役員に関する事項 |
・氏名、名称 ・地位及び担当 ・責任限定契約の内容の概要 ・役員の報酬額等及び報酬額の決定方針 ・辞任した役員または解任された役員に関する事項 ・役員の重要な兼職の状況 ・監査役、監査等委員または監査委員が財務及び会計に関 する相当程度の知見を有しているものであるときは、そ の事実 ・監査等委員会設置会社である場合、常勤の監査等委員の選定の有無及び理由 ・指名委員会等設置会社である場合、常勤の監査委員の選定の有無及び理由
・その他役員に関する重要な事項 ・社外役員に関する事項(社外役員を設けた場合) ・監査役会設置会社である大会社かつ有報提出会社が社外 取締役を置いていない場合には、社外取締役を置くこと が相当でない理由 |
株式会社の株式に関する事項 |
・大株主上位10名の氏名・名称、持株数、持株比率 ・その他株式に関する重要な事項 |
株式会社の新株予約権等に関する事項 |
・役員が保有する職務執行の対価としての新株予約権等に 係る事項 ・当該事業年度中に使用人等に対して交付した新株予約権 等に係る事項 ・その他新株予約権等に関する重要な事項 |
2. 会計参与設置会社における事業報告の内容(会社法施行規則 第125条)
省略
3. 会計監査人設置会社における事業内容の報告(会社法施行規則 第126条)
株式会社が当該事業年度の末日において会計監査人設置会社である場合に、事業報告に記載すべき事項のうち主
なものは以下のとおりです。(株式会社が当該事業年度の末日において公開会社でない場合は、2から4までに掲
げる事項を除く)
1 会計監査人の氏名又は名称
2 当該事業年度に係る各会計監査人の報酬等の額及び監査役(監査役会、監査等委員会、監査委員会)が同
意をした理由
3 会計監査人に対して非監査業務の対価を支払っているときは、その非監査業務の内容
4 会計監査人の解任又は不再任の決定の方針
5 会計監査人と当該株式会社との間で責任限定契約を締結しているときは、当該契約の内容の概要
6 剰余金の配当等を取締役会が決定する旨の定款の定めがあるときは、当該定款の定めにより取締役会に与
えられた権限の行使に関する方針
7 その他
関連項目:(会社法)内部統制システム、買収防衛策、非公開会社、会計監査人