インサイダー取引規制における「バスケット条項(包括条項)」とは、金融商品取引法に規定される「(業務等に係る)重要事実」のうち、「決定事実」「発生事実」「決算情報」以外で「当該上場会社及び子会社の運営、業務または財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの」をいいます。(金融商品取引法 第166条 2項 4号、8号)
金融商品取引法では、規制の対象となる「重要事実」を「決定事実」「発生事実」「決算情報」に区分して詳細に規定しています。
しかし、投資者の投資判断に著しい影響を与える事実のすべての事象を法律で定めることはできません。
そのため金融商品取引法は、「重要事実」を詳細に規定すると同時に、バスケット条項を設けることで、個別に規定されていなくても、投資判断に著しい影響を及ぼすものについては規制の対象としています。
(参考)過去に東京証券取引所自主規制法人の売買審査部が行ったインサイダー取引の調査では、以下の項目について公表した銘柄について、バスケット条項に該当する可能性があるとして調査を行いました。
・新薬の承認取得の断念
・薬品の副作用発生
・採掘権取得
・法令違反等の企業不祥事
・経営統合
・子会社の上場等
(東京証券取引所自主規制法人「こんぷらくんのインサイダー取引規制Q&A」より)
(重要事実)~金融商品取引法 第166条 第2項
分類 |
内容 |
軽微基準 |
決定事実(第1号) 次の事項を行うことを決定したこと、または、既に公表した決定事項について行わないことを決定したこと |
イ 株式等の募集 ロ 資本金の減少 ハ 資本準備金または利益準備金の減少 ニ 自己株式の取得 ホ 株式等の無償割当て ヘ 株式の分割 ト 剰余金の配当 チ 株式交換 リ 株式移転 ヌ 合併 ル 会社の分割 ヲ 事業の全部または一部の譲渡または譲受け ワ 解散 カ 新製品又は新技術の企業化 ヨ 業務上の提携その他 |
有価証券の取引等の規制に関する内閣府令 第49条 |
発生事実(第2号) 次に掲げる事項が発生したこと |
イ 災害に起因する損害または業務遂行の過程で生じた損害 ロ 主要株主の異動 ハ 株式等の上場廃止または登録取消しの原因となる事実 ニ その他 |
有価証券の取引等の規制に関する内閣府令 第50条 |
決算情報(第3号) 右の数値について、公表された直近の予想値等と新たに算出した予想値等に差異が生じたこと
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会社の予想数値等 ・ 売上高、経常利益、純利益 ・ 剰余金の配当
会社の属する企業集団の予想数値等 ・ 売上高、経常利益、純利益
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有価証券の取引等の規制に関する内閣府令 第51条
・ 売上高 差異が±10%未満 ・ 経常利益 差異が±30%未満 または差額が純資産等の5%未満 ・ 純利益 差異が±30%未満 または差額が純資産等の2.5%未満 ・ 配 当 差異が±20%未満 |
その他(第4号) |
前三号に掲げる事実を除き、当該上場会社等の運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの |
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子会社の決定事実(第5号) |
第1号のチ~ヨに該当する事実 |
有価証券の取引等の規制に関する内閣府令 第52条 |
子会社の発生事実(第6号) |
第2号のイまたはニに準ずる事実 |
有価証券の取引等の規制に関する内閣府令 第53条 |
子会社の決算情報(第7号) |
子会社の売上高、経常利益、純利益に関する情報 |
有価証券の取引等の規制に関する内閣府令 第55条 |
子会社のその他(第8号) |
子会社について第4号に該当する事項 |
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