日経平均がバブル時の過去最高値(1989年12月29日の38,914円87銭)に肉薄しています。中国経済の落ち込みや新NISAの影響と思われ、実態経済を反映しているかといえば疑問です。ともあれ、この株高が資産効果を形成し、日本経済にプラスの効果を与えていってくれることを期待したいところです。
さて、そんな中、3月決算の時期が近づいてきましたが今年の年度決算対応トピックとしては、それほど大きなものはない印象です。他方で、四半期制度には大きな動きがあり、2024年4月1日から施行される改正金商法により、上場企業では順次四半期報告書の提出が廃止され、半期報告書への提出に変わっていきます。
実務担当者の立場からすると1Qと3Qの四半期報告書が四半期短信に一本化されるだけで、それほど工数に影響がない感覚だと思うのですが、それに伴う法令の改正等が複雑で、解説資料もwebにはたくさん出ていますが、改正の構造を理解するのは難解で、さながらパズルを解いていくような印象です。
押さえるべきポイントは単純で、四半期短信実務は従来どおり継続し、1Qの四半期報告書が不要となるのが3月決算の会社から、新しい半期報告書を提出するのは12月決算の会社から(1Q四半報は現行どおり必要)というだけです。ですが、法改正にあたっては、上場企業、従来から半期報告書を提出していた金融会社、継続開示が求められる非上場会社と、それぞれの立場に分けてルールが整理され、加えて、それらに対する監査・レビューの建付けやその強制・任意のルールも今回織り込まれたことから、ことさら難解に見えてしまいます。また、四半期報告書を半期報告書に変更する対応は金商法のパートであり、一方で、これまで四半期報告書側に記載されていた情報を四半期短信側に補充するといった対応は東証のパートであることから、金商法の改正と東証の四半期短信ルール改正の両方を追わないと全容がわからないという点も理解を難解にする要因に思えます。
今回の四半期制度の改定は、金融庁の「ディスクロージャーワーキング・グループ」からの提言をもとに、コスト削減や開示の効率化を図る方向性で展開されましたが、制度改正に関わられた方々にとっては思いのほか骨の折れる作業だったのではないでしょうか。これから対応される企業側の実務担当者も上述の構造がわからないと不安だと思います。また、今回の改正では四半期情報に関する監査・レビュー対応にも選択肢が出来てしまいましたので、監査法人側もスケジュール取りや報酬交渉等に関して昨年とは違う対応が求められることになるかと思います。
最後に、IPO準備への影響ですが、現時点ではまだ取引所の有価証券上場規程等は改定されていないので、今後の対応を待つことになります。具体的には「新規上場申請のための四半期報告書」がどうなるのか、上場承認時(あるいはその前に)公表される有価証券届出書において、これまでは記載が求められていた四半期情報がどのように取り扱われるのか、といったところかと思います。ただ、こちらも本質的には大きく変わるところではないはずなので、上場後の四半期開示実務に自然体で対応できるよう、しっかりと適時開示体制を準備・構築していく必要があります。
(加藤)