大型連休も終わり、ひと休みしていた上場承認も再開される時期になりました。
今年の新規上場社数(4月30日現在)は、26社(他にTOKYO PRO Market 11社)とほぼ前年並みとなっています。
今回はこのうち、TOKYO PRO Marketの動向について、見ていきたいと思います。
なお、新規上場社数等の集計値は手集計によるものであり、集計ミス等があるようでしたらご容赦ください。
※ 以下では、TOKYO PRO Marketを「TPM」、それ以外の市場を「一般市場」としています。
(1)認知度の向上と会社規模の大型化
ここ数年、TPMへの上場社数は毎年増加していますが、2020年に年間10社に到達して以降、増加ペースが加速しているように思います。
また、(社数が少なく、ばらつきも多いものの)各社の直前期の売上高平均は50億円を超えるところまで来ています。
これらの点については、諸事情により目先の一般市場への上場を見送った会社の受け皿として、TPMが受け容れられつつあるとみることもできると思います。
|
2017 |
2018 |
2019 |
2020 |
2021 |
2022 |
2023 |
TPM 新規上場 |
7社 |
8社 |
9社 |
10社 |
13社 |
21社 |
11社 |
直前期 売上平均 |
18.8億 |
8.2億 |
55.6億 |
36.7億 |
69.8億 |
54.1億 |
66.1億 |
一般市場へのステップアップ |
1社 |
- |
1社 |
1社 |
2社 |
1社 |
- |
※ 2023年の集計値は、いずれも2023年4月30日現在のものです。
(2)一般市場へのステップアップ事例
TPMの上場会社が一般市場へステップアップした初の事例は、2017年にJASDAQへ上場した㈱歯愛メディカルです。
TPMの前身のTOKYO-AIMへの上場第1号(メビオファーム㈱)は2011年のことですから、ステップアップ事例が出るまでに、6年以上かかっています。しかしその後はほぼ毎年、一般市場へステップアップする会社が出ています。(2023年4月現在 計6社)
TPMへ上場する会社の規模の大型化は、このような点にも影響していると思われます。
(3)一般市場で主幹事実績のある証券会社のJ-Adviserへの参入
TPMの上場においてJ-Adviserは、一般市場の主幹事証券に近い役割を担っていますが、J-Adviserの実績のある会社は、フィリップ証券㈱、㈱日本M&Aセンター、宝印刷㈱などで、一般市場の主幹事証券としての実績を持つ会社はほとんどありません。
日本取引所グループが一般市場の主幹事証券候補として公表している会社(注1)のうち、TPM上場時にJ-Adviserとなった初の事例は2020年のエイチエス証券㈱(現在の Jトラストグローバル証券㈱)で、同社は直近までに5社(注2)のJ-Adviserの実績があります。
また今年にはいり、アイザワ証券㈱がJ-Adviserを務める会社が上場しています。
(注1)https://www.jpx.co.jp/equities/listing-on-tse/new/basic/03.html
(注2)エイチエス証券㈱の実績を含みます。
証券各社の戦略の違いはあると思いますが、このように一般市場で主幹事実績のある証券会社のJ-Adviserへの参入が目立ち始めると、主幹事獲得の陣取り合戦が、一部TPMに波及する可能性も考えられます。
上述のようなシナリオは、関係者であればずっと前から描けていたかもしれませんが、これらのシナリオをなぞれる程度に実績が積み上がってきたことは注目に値すると思います。
流動性の問題など、TPMにはまだまだ課題がありますが、少しずつ前進しているのではないかと思います。
(原田)