2022年のIPO予定企業が出揃ったため、今年のIPO業界を振り返ってみたいと思います。(当記事は2022年12月15日時点のものであり、以下の社数には上場承認済みの12月上場予定企業も含まれています)
- 2022年のIPO社数は合計で91社(※)でした。2021年のIPO社数は125社だったため、前年比で34社減となりました。昨年は久しぶりに年間のIPO社数が100社を超えましたが、今年は一昨年までと同水準となりました。 ※TOKYO PRO Marketへの新規上場21社を合わせると112社になります。当記事ではTOKYO PRO Marketへの上場は社数から除いています。
- 公募価格ベースでの時価総額のトップは大栄環境の約1,200億円でした。時価総額が1,000億円を超える上場は他にソシオネクストのみで、大型の上場案件は少なかったです。
- 上場承認後、上場日までの間に上場承認が取り消された会社が8社ありました。そのうちトリプルアイズはその後、2022年内に上場を果たしています。一方、AnyMind Groupは2022年に2度上場承認され、2度とも取り消しとなりました。
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市場別では、4月に市場再編があり期中に市場名が変更になったため、便宜的に「東証1部+プライム」「東証2部+JASDAQ+スタンダード」「マザーズ+グロース」の区分で集計すると、「マザーズ+グロース」が70社と圧倒的で、「東証2部+JASDAQ+スタンダード」が14社、「東証1部+プライム」が3社となりました。また、地方市場である名証で3社、札証で1社のIPOがありました(重複上場は除いています)。
- 業種別では情報通信業が32社、サービス業が30社となっており、この2業種で全体の約7割を占めています。
- 主幹事証券はSMBC日興証券が24社で首位。以下、みずほ証券19社、大和証券16社、SBI証券12社、野村證券10社と続きました(社数は東証公表資料の「幹事取引参加者」の記載ベースで、複数の証券会社の記載がある場合は全て加算しています)。
- 監査法人はEY新日本が22社で首位。次いでトーマツと太陽がそれぞれ16社、あずさ8社、京都と仰星がそれぞれ7社となっています。大手監査法人と中堅監査法人の社数の差も少なくなってきています。
- 印刷会社については宝印刷が47社、プロネクサスが44社となりました。
- 証券代行機関については三菱UFJ信託が40社で首位、次いで三井住友信託が29社、みずほ信託が20社となっています。
2022年は米国のインフレ・継続的な金利上昇やロシアのウクライナ侵攻などの要因により、株式市場は軟調となりました。特に成長企業に対する評価(バリュエーション)は昨年までの好環境から一変し、厳しい環境となりました。バリュエーションが低下し想定している株価が期待できないことから、水面下で上場時期を延期した企業も多くあるようです。それでも91社の上場があったように上場を目指す企業は引き続き多い状況のため、来年の株式市場やバリュエーションの状況がより好転することを期待したいと思います。
(関口)