カタールで行われているサッカーワールドカップ決勝トーナメントで日本はクロアチアに敗れ、惜しくもベスト8に進めませんでした。ただ、予選リーグでのドイツやスペインへの勝利は、まだコロナ禍を脱しきれない年末に、とても明るいニュースとなりました。
さて、2022年も残すところあと僅かとなりました。今年のIPO社数(予定含む)は弊社集計では91社となっております(東京プロマーケット除く)。この中で、上場承認時に提出する有価証券届出書の監査報告書にKAM(Key Audit Matters)が掲載されている企業は、いくつあったと思いますか?
答えは以下の8社となります。
会社名 承認日・市場・決算 |
直前期資本金5億以上 |
直前期負債200億以上 |
監査法人 事務所 |
EDINET届出書リンク 東証Ⅰの部リンク |
ヤマイチ・ユニハイムエステート㈱ 2022/5/16 スタンダード・3月 |
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○ |
仰星 大阪 |
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(KAMのテーマ) ・ (直前期連結)賃貸事業目的で保有する不動産の減損の認識判定 ・ (直前期単体)連結と同様につき省略 |
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㈱エアークローゼット 2022/6/24 グロース・6月 |
○ |
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トーマツ 東京 |
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(KAMのテーマ) ・ (直前期単体)レンタル用資産の減損の計上額の妥当性 |
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日本ビジネスシステムズ㈱ 2022/6/28 スタンダード・9月 |
○ |
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EY新日本 東京 |
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(KAMのテーマ) ・ (直前期単体)繰延税金資産の回収可能性 |
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㈱FIXER 2022/9/1 グロース・8月 |
○ |
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太陽 東京 |
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(KAMのテーマ) ・ (直前期単体)クラウドサービス事業における売上高の期間帰属の適切性 |
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㈱ソシオネクスト 2022/9/6 プライム・3月 |
○ |
○ |
EY新日本 東京 |
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(KAMのテーマ) ・ (直前々期連結)株式会社ソシオネクストが計上するNRE売上の実在性及び期間帰属の適切性 ・ (直前期連結)株式会社ソシオネクストが計上するNRE売上の実在性及び期間帰属の適切性 ・ (直前々期単体)連結と同様につき省略 ・ (直前期単体)連結と同様につき省略 |
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大栄環境㈱ 2022/11/9 プライム・3月 |
○ |
○ |
仰星 大阪 |
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(KAMのテーマ) ・ (直前々期連結)のれんの減損の兆候の判定 ・ (直前期連結)のれんの減損の兆候の判定(直前々期連結)のれんの減損の兆候の判定 ・ (直前々期単体)関係会社株式の評価 ・ (直前期単体)関係会社株式の評価 |
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スカイマーク㈱ 2022/11/10 グロース・3月 |
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○ |
トーマツ 東京 |
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(KAMのテーマ) ・ (直前々期単体)事業計画の合理性(繰延税金資産の回収可能性及び継続企業の前提に関する評価の基礎の検討) ・ (直前期単体)事業計画の合理性(繰延税金資産の回収可能性及び継続企業の前提に関する評価の基礎の検討) |
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オープンワーク㈱ 2022/11/14 グロース・12月 |
○ |
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太陽 東京 |
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(KAMのテーマ) ・ (直前期単体)営業収益の正確性及び期間帰属 |
このようにKAMが掲載されている事例が少ない理由は、IPOの際は、直前期末において資本金5億円未満かつ負債200億円未満の会社、もしくは、資本金5億円以上であっても直前期売上高10億円未満(「直前事業年度の売上高」と「直近3年間に終了した各事業年度に係る損益計算書による売上高の額の合計額を3で除して得た額」のうちいずれか大きい方)でかつ負債200億円未満の会社については、KAMの対象外となることによります。また、IPO承認時には直前々期と直前期の2期分の監査証明が必要ですが、2022年3月期以降を直前期とする会社から、2期分ともKAMの記載が必要となります。今年の事例で見る限り2期とも同じテーマになっているようです。
なお、従前のブログでは監査基準委員会研究報告第6号「監査報告書に係るQ&A」のQ2-1において「上場申請時に提出するⅠの部に含まれる財務諸表に対しては、準金商法監査のため厳密には金商法に基づく監査ではないが、上場承認後、金商法に基づき、ほぼ同内容の有価証券届出書の提出が必要となるため、後日提出される金商法に基づく監査報告書と同様であることが想定されていると考えられる」との記載がある旨を紹介しておりましたが、上記8社については、有価証券届出書だけでなく、東証に提出するⅠの部にも同じくKAMの記載があり、Ⅰの部の監査報告書においてもKAMが記載される実務が定着しているようです。
IPO直後の有価証券報告書の提出からは規模に関わらずKAMの記載が必須となりますので、上記以外の今年上場された会社の監査役等も、会計監査人とKAMについてしっかりと議論しておく必要があります。弊社のIPODB(登録制)ではKAM有りフラグも設けておりますのでご活用ください。
(加藤)