公務員への交際費支出について
東北新社による総務省幹部に対する接待問題が、連日報道を賑わせています。
上場審査でも会社の交際費支出について論点がありますが、それは主に会社幹部による公私混同の支出の有無ではないかと思います。
今回は、公務員への交際費支出の観点から、交際費管理について考えてみました。
なお、贈収賄に該当するようなケースは審査上明らかにアウトですので、ここでは主に国家公務員倫理規程の問題について考えます。
1. 国家公務員倫理規程
国家公務員倫理規程(以下「倫理規程」)では、国家公務員等が利害関係者から金銭、物品、不動産の贈与や無償のサービスの提供を受けること、未公開株式を譲り受けること等を禁じています。
(注)利害関係者とは、許認可、補助金の交付、立入検査、行政指導などの対象となる法人や個人をいいます。また、上記の禁止行為には接待を受けることも含まれるそうです。
これは、「利害関係者からの贈与等を受けることで、国民の疑惑や不信を招くことのないように」という考え方に基づくもので、賄賂であるかどうかは関係ありません。
ただ、「倫理規程」が規制しているのは公務員側ですので、東北新社のケースでいうと、接待を受けた公務員はダメといっているだけで、接待した東北新社に処罰があるわけではありません。
上場準備会社で公務員への交際費支出について検討する場合は、「倫理規程」の趣旨をよく理解し、高いコンプライアンス意識をもって自社の処罰の有無とは関係なくその適否を判断しなければ、上場審査で問題になる可能性があります。
2. 判断基準について
公務員に対する交際費支出の適否の判断基準としては、「国家公務員倫理規程 論点整理・事例集(令和2年新装版)」が参考になります。
事例集では「配偶者への香典」、「参加者のほとんどが利害関係者の懇親会」、「シンポジウムの昼食及びコーヒー」、「創業記念コンサート」など、物品の受領等が認められる場合、認められない場合について詳しく説明されています。事例集にざっと目をとおすだけでも判断の材料になると思います。
3. 交際費管理規程について
上場準備会社では、会社の判断もしくは主幹事証券の要請で、交際費管理規程を作成する場合があります。そして交際費管理規程の中には、公務員への交際費支出について規定している例があります。調べてみたところ、細かい表現は違いますが規定の仕方は大きく2つに別れるようです。
(例1)公務員に対する交際費支出を禁止する場合(例外なし)
第●条 公務員を対象とした交際費の支出は、禁止する。 |
(例2)公務員に対する交際費支出を原則禁止(例外あり)とする場合
第●条 原則として、公務員を対象とした交際費の支出は禁止する。ただし、相手方の規則等に基づき、届出がなされて、これを確認した場合にはこの限りではない。 |
前者の場合、公務員への交際費支出は、たとえ「倫理規程」ではセーフでも、会社側は例外なく交際費管理規程違反となります。
後者の場合は、相手方の届出を確認した旨を交際費申請書に記載する等の手続きが必要となります。
そしていずれの場合も、規程の遵守状況について内部監査等による事後チェックが必要になると思われます。
(原田)