2020年のIPO市場は一時的にコロナ禍の影響を受けたものの、終わってみれば昨年以上のIPO社数となりそうです。
他の株式市場とは性格を異にするプロ投資家向けのTOKYO PRO Market(以下「TPM」)も今年は10社(昨年は9社)が上場し、件数は増加しています。
ただ、TPMに上場する会社のほとんどは上場時に公募・売出しを実施していないこともあり、上場後の流動性(株式の売買状況)についてはどうなのか、疑問に思っていました。
今回はTPM上場会社の開示資料を用い、上場後の売買状況について見ていきたいと思います。(TPMの流動性の正確な情報をお知りになりたい場合は、JPXの統計情報(日報、月報等)をご覧になるとよいと思います)
(1)確認の対象
過去にTPMに上場し、その後他の市場(マザーズなど)へ上場した3社を対象としました。
(2)確認の方法
有価証券届出書(TPM申請時は発行者情報)等の開示情報を用い、TPM上場日以降、他の市場への上場承認日までの株式の売買状況を推定しました。
なお、以下ではいずれも潜在株式を除いた株式数を記載しています。
(3)事例
①㈱歯愛メディカル (単位:株)
株主 |
TPM申請時 2016/5/10 |
TPM上場日 2016/6/17 |
資本業務提携 2016/10/18 |
JASDAQ承認 2017/11/13 |
社長及び配偶者 |
2,000,000 |
▲100 |
▲799,900 |
1,200,000 |
取引先 |
- |
+100 |
▲100 |
- |
エア・ウォーター㈱ |
- |
+800,000 |
800,000 |
|
発行済株式数 |
2,000,000 |
0 |
0 |
2,000,000 |
(注)JASDAQ承認時の実際の発行済株式数は、株式分割(1株→5株)により1000万株だが、上表では株式分割による株式数の増加の記載を省略している。
②㈱global bridge HOLDINGS (単位:株)
株主 |
TPM申請時 2017/9/14 |
TPM上場日 2017/10/17 |
OP行使 |
マザーズ承認 2019/11/20 |
親会社(持株会社) |
1,064,450 |
+100 |
|
1,064,550 |
個人株主 |
600,000 |
▲100 |
|
599,900 |
代表取締役 |
183,300 |
|
+210,000 |
393,300 |
他の株主(2名) |
335,550 |
|
|
335,550 |
発行済株式数 |
2,183,300 |
0 |
+210,000 |
2,393,300 |
③㈱ニッソウ (単位:株)
株主 |
TPM申請時 2018/1/18 |
TPM上場日 2018/2/26 |
セントレックス承認 2020/2/25 |
社長及び配偶者 |
400,000 |
▲200 |
399,800 |
取引先 |
- |
+200 |
200 |
発行済株式数 |
400,000 |
0 |
400,000 |
3社の事例を見ただけですが、いずれも上場日に100株か200株の取引を成立させてそれきりという印象は否めません。
(なお、㈱歯愛メディカルの場合は、エア・ウォーター㈱との資本業務提携に係る株式移動がありますが、大量保有報告書によると市場外取引とのことです)
もちろん3社には個別の事情があるでしょうし、上記の事例だけでTPM全体を語ることもできません。
また、プロ向け市場の流動性は、一般投資家も参加する市場の流動性とは違うのかも知れませんが、市場発足当初のイメージとはずいぶん違うような気がします。
2020年は、東証の本則市場、マザーズ、JASDAQの再編の様子が具体的に見えてきた年でしたが、ある程度目処が立ったら、次はTPMの番なのかも知れません。
(原田)