2020年9月7日に東京証券取引所から「東証上場会社における独立社外取締役の選任状況及び指名委員会・報酬委員会の設置状況」が公表されました。
公表資料によれば、たとえば東証1部上場会社の場合、複数の独立社外取締役を選任している会社は95.3%(前年は93.4%)と100%に近づいてきています。
また、指名委員会や報酬委員会(法定・任意)を設置している1部上場会社は、それぞれ全体の58.0%(同49.7%)、61.0%(同52.4%)であり、上場会社のコーポレート・ガバナンスの強化が進んでいることが見て取れます。
では、IPOの場合はどうでしょうか?
今回は、社外取締役の人数の観点から、最近のIPOの傾向を見ていきたいと思います。
以下は、2014年以降のIPOの社外取締役の1社当たり平均人数(東証上場承認時)です。
(集計ミスがありましたらご容赦ください)
市場 |
東証 IPO時の社外取締役(単位:人/社) |
||||||
2014 |
2015 |
2016 |
2017 |
2018 |
2019 |
2020 |
|
東証1部 |
2.3 |
5.1 |
3.1 |
3.0 |
3.3 |
2.0 |
2.5 |
東証2部 |
1.1 |
1.0 |
2.4 |
2.9 |
3.0 |
2.4 |
2.3 |
マザーズ |
1.0 |
1.0 |
1.1 |
1.7 |
1.6 |
1.6 |
1.7 |
JASDAQ |
0.5 |
1.0 |
1.2 |
1.3 |
1.4 |
1.8 |
1.2 |
総計 |
1.1 |
1.3 |
1.4 |
1.9 |
1.7 |
1.7 |
1.7 |
東証IPO社数 |
75社 |
89社 |
81社 |
87社 |
89社 |
82社 |
44社 |
(注1)集計対象にはTOKYO PRO Market経由上場を含む。(2020年は8月上場分まで)
(注2)2015年の東証1部には、日本郵政グループ3社を含む。
数字を見るとIPO会社の場合2016年から2017年にかけて社外取締役の増加が顕著であり、その背景には2015年のコーポレートガバナンス・コード制定があると思われます。
また、市場別には、IPO時の平均的な社外取締役の数として東証1部で3人、東証2部は2人〜3人、マザーズとJASDAQは1人〜2人という数字が見えてきます。
もちろん、社外取締役の人数を揃えればよいというわけではありません。
しかし、上場会社の社外取締役がIPOだけで年間延べ150人近く増えていくと考えると、社外取締役の問題は「量より質」では足りず、経営に知見のある人材の「質を伴った量の拡大」が急務であると再認識させられます。
(原田)