コロナ禍のなか、お盆を過ぎたというのに今年は全国各地で記録的な酷暑が続いています。来年の夏は涼しくて楽しい全国民で盛り上げれる夏となることを願うばかりです。
さて、以前弊社古川の方でもブログで取り上げていましたが、上場各社は今年度3月決算会社からいよいよKAM(Key Audit Matters:監査上の主要な検討事項)の監査報告書上での開示が強制適用となります。会計専門誌の週刊経営財務の分析(No.3465~)によれば、下記の通り先行適用の会社は今年の6月末時点では45社あるとのことでした。
銘柄code |
会社名 |
業種 |
監査法人 |
会計 基準 |
連結項目数 |
単体項目数 |
備考 |
1333 |
水産・農林業 |
あずさ |
日本 |
1 |
1 |
|
|
2130 |
サービス業 |
アヴァンティア |
IFRS |
2 |
1 |
|
|
2331 |
サービス業 |
太陽 |
日本 |
2 |
2 |
|
|
3199 |
小売業 |
太陽 |
日本 |
3 |
1 |
|
|
3231 |
不動産業 |
EY新日本 |
日本 |
3 |
0 |
|
|
3289 |
不動産業 |
EY新日本 |
日本 |
2 |
0 |
|
|
4091 |
化学 |
EY新日本 |
IFRS |
1 |
1 |
|
|
4188 |
化学 |
EY新日本 |
IFRS |
3 |
0 |
|
|
4502 |
医薬品 |
あずさ |
IFRS |
2 |
1 |
|
|
4523 |
医薬品 |
トーマツ |
IFRS |
1 |
1 |
|
|
5020 |
石油・石炭製品 |
EY新日本 |
IFRS |
2 |
0 |
訂正あり |
|
5486 |
鉄鋼 |
EY新日本 |
IFRS |
1 |
1 |
|
|
5713 |
非鉄金属 |
あずさ |
IFRS |
2 |
1 |
|
|
6503 |
電気機器 |
あずさ |
IFRS |
2 |
2 |
|
|
6702 |
電気機器 |
EY新日本 |
IFRS |
3 |
3 |
|
|
6758 |
電気機器 |
PwCあらた |
米国 |
2 |
1 |
|
|
6902 |
輸送用機器 |
トーマツ |
IFRS |
2 |
2 |
|
|
7203 |
輸送用機器 |
PwCあらた |
米国 |
2 |
1 |
|
|
7267 |
輸送用機器 |
あずさ |
IFRS |
3 |
1 |
|
|
7751 |
電気機器 |
EY新日本 |
米国 |
2 |
1 |
|
|
8031 |
卸売業 |
トーマツ |
IFRS |
2 |
1 |
|
|
8053 |
卸売業 |
あずさ |
IFRS |
3 |
2 |
|
|
8214 |
小売業 |
PwCあらた |
日本 |
3 |
1 |
連結にはリスク表あり |
|
8285 |
卸売業 |
あずさ |
日本 |
1 |
1 |
|
|
8303 |
銀行業 |
トーマツ |
日本 |
3 |
3 |
|
|
8306 |
銀行業 |
トーマツ |
日本 |
3 |
1 |
表なし |
|
8308 |
銀行業 |
トーマツ |
日本 |
1 |
1 |
|
|
8309 |
銀行業 |
あずさ |
日本 |
2 |
0 |
|
|
8316 |
銀行業 |
あずさ |
日本 |
2 |
0 |
|
|
8411 |
銀行業 |
EY新日本 |
日本 |
2 |
0 |
|
|
8591 |
その他金融業 |
あずさ |
米国 |
2 |
1 |
|
|
8601 |
証券、商品先物取引業 |
あずさ |
日本 |
2 |
0 |
|
|
8604 |
証券、商品先物取引業 |
EY新日本 |
米国 |
3 |
0 |
|
|
8609 |
証券、商品先物取引業 |
東陽 |
日本 |
2 |
0 |
|
|
8628 |
証券、商品先物取引業 |
PwCあらた |
日本 |
非連結 |
1 |
|
|
8697 |
その他金融業 |
トーマツ |
IFRS |
3 |
1 |
|
|
8750 |
保険業 |
あずさ |
日本 |
6 |
1 |
|
|
8801 |
不動産業 |
あずさ |
日本 |
4 |
3 |
|
|
8802 |
不動産業 |
EY新日本 |
日本 |
3 |
2 |
|
|
9005 |
陸運業 |
EY新日本 |
日本 |
1 |
1 |
|
|
9434 |
情報・通信業 |
トーマツ |
IFRS |
5 |
1 |
|
|
9507 |
電気・ガス業 |
トーマツ |
日本 |
2 |
1 |
|
|
- |
その他(非公開企業) |
トーマツ |
日本 |
1 |
1 |
表なし |
|
- |
その他(非公開企業) |
トーマツ |
日本 |
3 |
1 |
表なし |
|
- |
その他(非公開企業) |
トーマツ |
日本 |
1 |
1 |
表なし |
先行事例の内容を見てみるとほとんどがのれんや減損、引当金等会計上の見積りについて取り上げているようです。その意味では、DWG報告の提言を踏まえ2020年3月期以降の有報から適用となっているMD&Aでの「会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の開示」や今年度3月決算会社から適用となる企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」(見積開示会計基準)の開示内容についても早い時期から、監査法人の認識と齟齬がないよう検討を進める必要があります。
さて、ではIPOの場合のKAMはどのような扱いとなるのでしょうか。
この点については、5月20日に改正された監査基準委員会研究報告第6号「監査報告書に係るQ&A」にて明確になっています。
結論から言いますと大規模IPO以外の会社はKAMの対象外(任意適用は可)となるようです。
具体的には、Q2-1 において、上場承認時の有価証券届出書の監査報告書は、直前期末において資本金5億円未満かつ負債200億円未満の会社、もしくは、資本金5億円以上であっても売上高10億円未満でかつ負債200億円未満の会社については、KAMの対象外となります。
なお、KAMの対象となるIPO会社は、直前期、直前々期いずれの監査報告書においても、KAM の記載が必要(2021年3月期が直前期の会社に限っては2020年3月期のKAMは不要)となるようです。
また、Q2-1 においては「上場申請時に提出するⅠの部に含まれる財務諸表に対しては、準金商法監査のため厳密には金商法に基づく監査ではあるが、上場承認後、金商法に基づき、ほぼ同内容の有価証券届出書の提出が必要となるため、後日提出される金商法に基づく監査報告書と同様であることが想定されていると考えられる」との記載もあり、このあたりは今後の実務動向を待つことになりそうです。
いずれにしても、上場後は、監査役及び監査役会(あるいは監査等委員会)と協議した事項のうち、当事業年度の財務諸表の監査で特に重要であると判断した事項をKAMとして決定することとなりますので、監査役(監査等委員)は、監査計画の段階から監査法人と連携していく必要がありますし、開示担当者・経理財務担当者は、MD&Aや見積開示会計基準の注記で、これらの議論の後手に回らないようIPO準備段階から留意していく必要があります。
(加藤)