【原田】「事業等のリスク」で見るコロナウイルス②

 5月25日に新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」)にかかる緊急事態宣言が解除され、IPO市場も徐々に日常を取り戻しつつあるように見えます。

 今回は、今年上場承認されたものの市場の混乱から上場を中止した会社のうち、5月8日以降、上場が再承認された会社について、当初承認時と再承認時で「事業等のリスク」の新型コロナに関する記載がどう変わったか見ていきたいと思います。

(再承認に関しては2020年6月15日までを対象としています。また「事業等のリスク」の解釈は、原田個人のものであることをご了承ください。)

 

①㈱ロコガイド(情報・通信業:当初承認3月4日、再承認5月21日)

 ざっと見る限り、当初の「事業等のリスク」に新型コロナ関連の記載はないように思います。

 再承認時は新型コロナに関して、感染拡大が長期化した場合の経営成績等への影響と株主総会継続会の可能性についての記載が追加されています。

 

②㈱コマースOneホールディングス(情報・通信業:当初承認3月4日、再承認5月22日)

 当初の「事業等のリスク」では、自然災害等(疫病の蔓延を含む)が同社の事業継続性に与える影響について記載しています。

 再承認時は上記に加え、新型コロナの流行が業績等に与える影響について記載している他、同社代表取締役の他社代表兼務の解消に関して、後任人事が遅れる可能性についても説明しています。

 

③㈱Speee(情報・通信業:当初承認3月16日、再承認6月10日)

 当初の「事業等のリスク」に新型コロナ関連の記載はないように思います。

再承認時は新型コロナの感染拡大による経済的影響について、項目を新設して説明しています。

 

④㈱アイキューブドシステムズ(情報・通信業:当初承認3月3日、再承認6月11日)

 当初の「事業等のリスク」に新型コロナ関連の記載はないように思います。

 再承認時は、当初から記載されていた「事業環境の変化」「特定取引先への依存」「エンドユーザーの解約リスク」「同社が小規模組織であること」に関連するリスクとして、新型コロナの影響を追記しています。

 

⑤GMOフィナンシャルゲート㈱(情報・通信業:当初承認3月25日、再承認6月11日)

 当初の「事業等のリスク」には、経済環境の変化等(感染症のまん延を含む)が同社の業績に与える影響について記載されています。

 再承認時は上記に加え、「感染症のまん延について」の項目を新設し、新型コロナが業績に与える影響について記載しています。

 

 

 いったん上場を中止しながらも早期に再承認を実現した上記の会社は、事業内容の点から新型コロナに対する耐性が高いと思われます。

 今後再承認される会社については、新型コロナが業績等に与える影響について、これらの会社と同等かそれ以上の説明が必要ではないかと思います。

 

原田

 

IPO状況12月27日現在

2024IPO数(通期)=86*

2023IPO数(通期)=96*

 

市場別

2024

(通期)

2023

(通期)

プライム

スタンダード

グロース

メイン-名

札幌(本則)

ネクスト-名

アンビシャス

4*

13

64

1

0

4

1

2

23

66

5

1

1

0

 Qボード 3 1

合計

  90

99

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過年度のIPO状況

2023IPO(通期)=96*

 

市場別

2023

(通期)

2022

(通期)

プライム

スタンダード

グロース

メイン-名

札幌(本則)

ネクスト-名

アンビシャス

2

23

66

5

1

1

0

3※1

142

70※3

2

0

2

1

 Qボード 1 0

合計

   99

92

 複数市場へ同時に上場する会社があるため、IPO社数と市場別内訳の合計は一致しない点にご注意ください。

1:東証11社を含みます。

2:東証2部+JQ4社を含みます。

3:マザーズ10社を含みます。

 

2022IPO数(通期)=91

 

市場別

2022

 (通期)

2021

(通期)

プライム

スタンダード

グロース

東証1

2

10

60

1

6

東証2

3

8

マザーズ

10

93

JASDAQ

メイン-名

1

2

16

名証2

0

3

ネクスト-名

セントレックス

2

0

1

Qボード

アンビシャス

0

1

3

合計

92

130

 複数市場へ同時に上場する会社があるため、IPO社数と市場別内訳の合計は一致しない点にご注意ください。