【原田】3線ディフェンス

 今年の6月28日に、経済産業省は「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」(グループガイドライン)を公表しました。

 「ガイドライン」は、グループガバナンスの在り方に関する指針を示すことで、主に単体としての企業経営を念頭に作成されたコーポレートガバナンス・コードを補完するものとして位置付けられています。

 

 「ガイドライン」では「グループ設計の在り方」「事業ポートフォリオマネジメントの在り方」「内部統制システムの在り方」「子会社経営陣の指名・報酬の在り方」「上場子会社に関するガバナンスの在り方」について個別に検討していますが、目についたのは「内部統制システムの在り方」の項目に出てくる「3線ディフェンス」という言葉です。

 

 この「3線ディフェンス」の考え方は、企業(グループ)のリスク管理に関してCOSOとIIA(内部監査人協会)がまとめたもので、組織を以下の3つに分け、それぞれに役割を持たせ、内部統制を運用することを提唱しています。

区分

組織

役割・位置付け

1線

事業部門(社長)

リスクオーナーとしてリスクを評価、コントロールする。

2線

管理部門(CFO

1線のリスク管理を支援し、監視する。

事業部門からの独立性を高め、子会社も含めた管理部門の直接のラインを構築する。

3線

内部監査部門

独立の立場から第1線、第2線を監査する。

社長への報告とは別に、監査役会等にレポートラインをもつ。

 「3線ディフェンス」は、過去に発生した不祥事において、事業部門の暴走(過度なリスクテイク)を、管理部門、内部監査部門が止められなかったことがきっかけとなっているそうです。そのため、内部監査部門の独立性はもちろん、管理部門も、最終的な人事権・人事評価について事業部門から影響を受けないことを前提としています。

 

 新規上場への影響はというと、従来の上場準備でも、3つのディフェンスラインを分ける考え方がなかったわけではありませんが、「ガイドライン」が「3線ディフェンス」という概念を前面に打ち出してきたことで、今後「3線ディフェンス」を、より意識した指導や審査が行われる可能性はあると思います。

 ただ、COSOとIIAの文書でも述べられていますが、特に第2線は組織の規模や業種により大きく異なる場合があります。小規模会社が多い上場準備会社に「3線ディフェンス」の考え方をどう適用するかは、コンサルタントの知恵の絞りどころではないかと感じています。

 

原田

 

IPO状況12月20日現在

2024IPO数(予定含む)=86【-】*

2023IPO数(通期)=96*

 

市場別

2024

(含予定)

2023

(参考)

プライム

スタンダード

グロース

メイン-名

札幌(本則)

ネクスト-名

アンビシャス

4【-】*

13

64

1

0

4

1

2

23

66

5

1

1

0

 Qボード 3 1

合計

  90【-】

99

 複数市場へ同時に上場する会社があるため、IPO社数と市場別内訳の合計は一致しない点にご注意ください。また、【 】は、S-1方式による上場承認前の社数であり外数で記載しています。 

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過年度のIPO状況

2023IPO(通期)=96*

 

市場別

2023

2022

(参考)

プライム

スタンダード

グロース

メイン-名

札幌(本則)

ネクスト-名

アンビシャス

2

23

66

5

1

1

0

3※1

142

70※3

2

0

2

1

 Qボード 1 0

合計

   99

92

 複数市場へ同時に上場する会社があるため、IPO社数と市場別内訳の合計は一致しない点にご注意ください。

1:東証11社を含みます。

2:東証2部+JQ4社を含みます。

3:マザーズ10社を含みます。

 

2022IPO数=91

 

市場別

2022

 

2021

(参考)

プライム

スタンダード

グロース

東証1

2

10

60

1

6

東証2

3

8

マザーズ

10

93

JASDAQ

メイン-名

1

2

16

名証2

0

3

ネクスト-名

セントレックス

2

0

1

Qボード

アンビシャス

0

1

3

合計

92

130

 複数市場へ同時に上場する会社があるため、IPO社数と市場別内訳の合計は一致しない点にご注意ください。