2017年上期の新規上場企業数は39社となりました。2015年の43社、2016年の40社と比較すると微減となっていますが、IPO市場は相変わらず活況を呈していると言えるでしょう。
市場別では、マザーズ22社、JASDAQ8社となっています。2016年上半期ではマザーズ25社、JASDAQ 7社となっているので、傾向としては特に変化はありません。
主幹事別では、野村證券14社、大和証券6社、SBI証券6社、みずほ証券4社、SMBC日興証券3社となっています。2016年上半期では、大和証券9社、みずほ証券9社、野村證券7社、SMBC日興証券6社、SBI証券5社となっていたので、2017年上期は野村証券の強さが目立ちます。(注)
監査法人別では、新日本15社、トーマツ11社、あずさ3社となっています。2016年上期では、新日本13社、あずさ10社、トーマツ8社とBIG3間で大きな差はありませんでしたが、今期は新日本の関与が目立っています。
上期の状況から、2017年のIPO社数は80~90社の見通しと言われており、ここ10年で最も多かった15年(92社)や昨年(83社)と同水準が見込まれています。
上記のようにIPOの件数は2015年以降わずかながら減少しているため、「IPO市場は減速傾向にある」といった見方や「2004年~2006年の年間150社超と比較しまだまだ新規上場企業は少ない」といった見方もあるようですが、私は、年間80社程度という比較的高位で安定している状況を保っているという見方をしています。
IPOの社数は、2010年の22社を底として2015年の92社まで右肩上がりで増加してきましたが(2016年は84社)、これにはいくつかの原因が考えられます。
2014年の金融商品取引法等の改正により、新規上場時に提出する有価証券届出書の「第三部 特別情報」における提出会社の財務諸表の記載が不要となったことや、新規上場企業は上場後3年間、「内部統制報告書」の監査免除を選択することが可能となったこと等による、上場準備作業の簡素化がその一つです。
起業が以前と比較し容易になったことも、IPOを目指す会社にとって好条件と言えます。
制度面では、会社法の制定により最低資本金制度が廃止されたことや(旧商法では株式会社は1,000万円、有限会社は300万円と最低資本金を規定)、役員の人数の緩和(株式譲渡制限会社の場合は取締役1名だけでも会社設立が可能)がなされたことにより会社設立のハードルは旧商法と比較し低くなりました。
運用面ではクラウドツールの導入が進んでいます。AWS等の普及によりスタートアップの企業でもITインフラの構築や保守が容易となり、低コストのグループウェアや勤怠管理システム、経費精算システムの普及により管理コストも大幅に削減できているのではないかと感じます。
今後のIPO企業についても生産性向上を支援する業務効率化ツールを提供している企業に注目しています。業務効率化支援企業の成長が他社の生産性向上を促し、ベンチャー企業の成長を加速するという好循環を期待しています。
(注)主幹事数は「幹事取引参加者」ベースで記載しています。
(古川)