今年も兜神社の桜がきれいに咲きました。
今日から新年度の会社も多いのではないでしょうか。
暦年ベースでは第1四半期が終わったところですが、2011年以降の第1四半期での上場承認社数の状況(中止を除き、TOKYO PRO Marketを含みます)は以下の通りです。
2011年1Q 7社
2012年1Q 13社
2013年1Q 15社
2014年1Q 17社
2015年1Q 35社
このように今年は例年に比べて倍以上の水準となっており、IPO市場の活況ともとれますが、一方で、上場承認された企業を分析すると、3Q(12月)までの業績を見定めたであろう3月決算企業が9社、期越え上場企業が11社と合計すると35社のうち3分の2程度を占めています。これらの会社の中には本来もう少し早いタイミングで上場を計画していたものの、業績予想に対する達成確度が低いために上場のタイミングを遅らせた会社も含まれているものと思われます。
例えば3月決算の会社の場合では、通常であれば申請直前期の決算が6月の株主総会で承認された後に上場申請され、証券取引所の審査を経て秋頃に上場承認、その約1か月後の12月頃に上場となります。その際、上場承認時には直近の業績として4月から9月までの第2四半期の業績が監査法人のレビュー証明付で開示されると同時に申請期の通期業績予想が開示されることとなります。
ところが、業績見通しが不透明で当該業績予想への達成確度が低い場合には、上場申請の時期や上場承認の時期を遅らせて業績動向の様子を見るということになります。その場合には数週間や1か月単位で先送りするのではなく、3か月前後様子を見て、当該四半期会計期間の監査法人レビューを経た上で上場のタイミングをずらしていくことが一般的です。
因みにこのような上場タイミングの先送りには期限があり、申請期の定時総会までとなっています。この場合には上場時期が申請期の翌期になることから「期越え上場」と呼ばれたりします。
業績の見通しは内部の努力だけでなく外部環境によっても変動するものですから、ピタリと一致させることはそもそも無理だと思います。
重要なことは、経営者としてきちんと達成可能な計画を立てること、また、過去の趨勢や製商品・サービスの展開方針、設備投資計画、人員計画等をもとに、現状の環境要因や受注動向・市場動向等を加味した合理的な事業計画を立てること、更には、仮に修正を余儀なくされたとしても、どこがどう計画根拠と異なったのかを投資家に対しタイムリーに、かつ、納得感をもって説明できるかどうかだと思います。
昨日3月31日付で東証より「最近の新規公開を巡る問題と対応について」との標題で3つの対応がリリースされ、証券業協会並びに会計士協会への周知・協力要請がなされました。
これは昨年あたりから新規公開に対する株主・投資者の信頼を損ないかねない事例が散見されており、その再発防止を図る趣旨と思われますが、その中の1つに、上場時に公表される業績予想について、前提条件やその根拠の適切な開示を要請し、特に上場直後に業績予想の修正開示を行う場合には、それらに関する特に丁寧な説明を求めていくという内容が含まれています。
上場を目指されている会社さんは確度の高い予算・中計の策定や毎月の予実分析に奮闘されていることかと思いますが、このような利益管理能力の向上への努力はパブリックカンパニーになる上での重要な責務だと思います。
色々な理由から上場のタイミングも重要ではありますが、せっかくの上場後に苦労しないため、慌てないためにも、一層の利益管理能力の向上を求める今回の取引所の対応は、良いアドバイスとして前向きに捉えるべきではないでしょうか。
(加藤)