コーポレートガバナンス・コード(以下「コード」といいます。)とは、「実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたもの」をいい、5つの基本原則、31の原則、47の補充原則の計83原則で構成されています。
「コード」は、政府の成長戦略「『日本再興戦略』改訂2014」を受けて策定され、2015年6月から適用されています。
(注1)「コード」は、コーポレートガバナンスを「会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」と定義しています。
(「コード」の目的)
「コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」は、「コード(原案)」について「株主を始めとする様々なステークホルダーに対して負っている責務に関する説明責任を果たすことを含め、会社の意思決定の透明性・公正性を担保しつつ、これを前提とした会社の迅速・果断な意思決定を促すことを通じて、いわば「攻めのガバナンス」の実現を目指すもの」としています。
「コード」が適切に実践されることで、それぞれの会社において持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が図られ、その結果、会社、投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与することとなるものと期待されています。
(「コード」の特徴〜「原則主義」と「コンプライ・オア・エクスプレイン」)
①原則主義
「コード」に定められた原則の適用方法は、会社の業種、規模、機関設計、外部環境等により、自然と異なってきます。
したがって「コード」では、各社の個別事情を超えて、実効的なコーポレートガバナンスが実現できるように「原則主義」を採用しています。
「コード」では、「抽象的で大掴みな原則」について定め、具体的な適用については、その趣旨・精神に照らして、各社が決定することになります。
②コンプライ・オア・エクスプレイン
「コード」には法的拘束力はなく、「コンプライ・オア・エクスプレイン」(実施するか、実施しない場合には理由を説明するか)の手法を採用しています。
(証券取引所の規則)
各証券取引所は、上場規程等、それぞれの規程において、以下を定めています。
①「コード」の趣旨・精神を尊重すること
②「コード」の原則を実施するか、実施しない場合にはコーポレート・ガバナンス報告書において、その理由を説明すること
(「コード」の体系)
コードは「基本原則」「原則」「補充原則」で構成されています。
各証券取引所は、市場の特性ごとに「実施するか、実施しない場合にはその理由を説明する」原則の範囲について定めています。
(注2)「コード」の体系については、本項の末尾を参照ください。
●「実施するか、実施しない場合にはその理由を説明する」原則の範囲
証券取引所 |
市場 |
基本原則 |
原則 |
補充原則 |
札幌証券取引所 |
- |
○ |
- |
- |
東京証券取引所 |
プライム市場 スタンダード市場 |
○ |
○ |
○ |
|
グロース市場 |
○ |
- |
- |
名古屋証券取引所 |
ネクスト市場の上場会社及び国内の他の金融商品取引所の本則市場以外の市場に上場する上場会社 |
○ |
- |
- |
|
本則市場に上場する会社の内、上記以外の会社 |
○ |
○ |
○ |
福岡証券取引所 |
- |
○ |
- |
- |
(注1)いずれも外国会社は除きます。
(注2)プライム市場の上場会社に対しては、コーポレートガバナンス・コードで、より、レベルの高い原則が提示されています。
(日本版スチュワードシップ・コードについて)
「コーポレートガバナンス・コード」は、会社のための「原則」ですが、「日本版スチュワードシップ・コード」(以下、スチュワードシップ・コード)は、「機関投資家が、対話を通じて企業の中長期的な成長を促すなど、受託者責任を果たすための原則」です。
「スチュワードシップ・コード」は、「日本版スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」により策定されました。
会社のための原則である「コーポレートガバナンス・コード」と、機関投資家のための原則である「スチュワードシップ・コード」は、実効的なコーポレートガバナンスを実現するための「いわば「車の両輪」」であるといえます。
なお、金融庁は、「スチュワードシップ・コード」の「受入れ表明」をした機関投資家のリストを公表・更新しています。
(参考)
●「コード」の体系の概要(2021年6月1日)
章 |
基本原則及び原則 |
補充原則 |
|
第1章 |
基本原則1 |
株主の権利・平等性の確保 |
- |
原則1-1 |
株主の権利の確保 |
①〜③ |
|
原則1-2 |
株主総会における権利行使 |
①〜⑤ |
|
原則1-3 |
資本政策の基本的な方針 |
- |
|
原則1-4 |
政策保有株式 |
①〜② |
|
原則1-5 |
いわゆる買収防衛策 |
① |
|
原則1-6 |
株主の利益を害する可能性のある資本政策 |
- |
|
原則1-7 |
関連当事者間の取引 |
- |
|
第2章 |
基本原則2 |
株主以外のステークホルダーとの適切な協働 |
- |
原則2-1 |
中長期的な企業価値向上の基礎となる経営理念の策定 |
- |
|
原則2-2 |
会社の行動準則の策定・実践 |
① |
|
原則2-3 |
社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題 |
① |
|
原則2-4 |
女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保 |
① |
|
原則2-5 |
内部通報 |
① |
|
原則2-6 |
企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮 |
- |
|
第3章 |
基本原則3 |
適切な情報開示と透明性の確保 |
- |
原則3-1 |
情報開示の充実 |
①〜③ |
|
原則3-2 |
外部会計監査人 |
①〜② |
|
第4章 |
基本原則4 |
取締役会等の責務 |
- |
原則4-1 |
取締役会の役割・責務(1) |
①〜③ |
|
原則4-2 |
取締役会の役割・責務(2) |
①〜② |
|
原則4-3 |
取締役会の役割・責務(3) |
①〜④ |
|
原則4-4 |
監査役及び監査役会の役割・責務 |
① |
|
原則4-5 |
取締役・監査役等の受託者責任 |
- |
|
原則4-6 |
経営の監督と執行 |
- |
|
原則4-7 |
独立社外取締役の役割・責務 |
- |
|
原則4-8 |
独立社外取締役の有効な活用 |
①〜③ |
|
原則4-9 |
独立社外取締役の独立性判断基準及び資質 |
- |
|
原則4-10 |
任意の仕組みの活用 |
① |
|
原則4-11 |
取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件 |
①〜③ |
|
原則4-12 |
取締役会における審議の活性化 |
① |
|
原則4-13 |
情報入手と支援体制 |
①〜③ |
|
原則4-14 |
取締役・監査役のトレーニング |
①〜② |
|
第5章 (注2) |
基本原則5 |
株主との対話 |
- |
原則5-1 |
株主との建設的な対話に関する方針 |
①〜③ |
|
原則5-2 |
経営戦略や経営計画の策定・公表 |
① |
(注) 2018年6月に金融庁は、「投資家と企業の対話ガイドライン」を公表しています。(改訂された最新版は2021年6月11日付)
この「ガイドライン」は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けた機関投資家と企業の対話において、重点的に議論することが期待される事項を取りまとめたもので、企業が「コード」の各原則を実施する場合や、実施しない理由の説明を行う場合には、「ガイドライン」の趣旨を踏まえることが期待されています。