経営者自らが営業した案件・企画した案件や、例外的に経営者が決裁を行っている案件等を、上場審査では「経営者が関与する取引」といい、取引実施にあたっての会社の牽制体制等について確認を行っています。
たとえば東京証券取引所は、新規上場ガイドブックの中で、経営者が関与する取引について「その存在自体を直ちに問題視するものではないが、一般的に社内からの牽制が効きにくく、不正につながる懸念もある」とし、「経営者が関与する取引について①組織的に検討が行われ牽制機能が発揮される体制が整備されているか、②実際に行われた取引が不適切なものでないかどうかを確認する」としています。確認期間は原則として最近2年間及び申請期で、Ⅱの部等にも、取引内容や牽制体制の整備・運用状況について記載が求められています。
新規上場ガイドブックでは、以下の場合を「経営者が関与する取引」として例示しています。
・経営者の個人的な伝手で取引相手を発掘・交渉し、取引開始に至ったケース
・経営者自らが特定の出店計画を発案して、当該出店が遂行されているケース
・与信設定手続や契約締結に係る手続において、通常は事業部長等の決裁であるところ、例外的に経営者自ら決裁を
行っているケース
・与信設定手続や契約締結に係る手続において、決裁者である経営者にりん議が回る以前の段階で反対意見が出さ
れ、却下案件となるところ、例外的に経営者にりん議が回り、決裁されているケース
・通常は取引しない相手先ではあるが、経営者の関与があったために取引開始に至ったケース
上場準備においては「経営者が関与する取引」について、以下の点に注意する必要があります。
・予め定められた規程、マニュアル等に従い、他の取引と同様の手続で取引予定先の信用調査、与信額の決定が行
われているか。
・予め定められた決裁権限により、他の取引と同様に、取引実施について検討、決裁が行われているか。
・監査役、社外取締役が「経営者が関与する取引」の有無及び取引内容について継続的に確認を行っているか。(注)
(注)証券会社審査及び取引所審査では、独立取締役及び監査役に対する面談の中で「経営者が関与する取引」の有
無や、申請会社が実施する当該取引への牽制状況等に対する評価について確認があります。