上場会社等が、公表前の内部情報をアナリストや機関投資家等の特定の第三者に提供する場合に、当該情報が他の投資家にも公平に提供されることを確保するルールを、フェア・ディスクロージャー・ルール(以下「FDルール」)といいます。
2018年4月に導入されたFDルールには、以下のような効果が期待されています。
(フェア・ディスクロージャー・ルール・タスクフォース報告より)
①発行者側の情報開示ルールを整備・明確化することで、発行者による早期の情報開示を促進し、ひいては投資家との対話を促進する
②アナリストによる、より客観的で正確な分析及び推奨が行われるための環境を整備する
③発行者による情報開示のタイミングを公平にすることで、いわゆる「早耳情報」に基づく短期的なトレーディングを行うのではなく、中長期的な視点に立って投資を行うという投資家の意識変革を促す
(FDルールとインサイダー取引規制の関係)
FDルールは、上場会社に対して積極的な情報開示を促し、すべての投資家が重要情報に公平にアクセスすることを可能とすることで、市場取引の公平性を確保するためのルールです。
一方、インサイダー取引規制は、一部の投資家が未公表の重要事実を業務上知ってしまった場合に有価証券の売買を禁じることで、市場取引の公平性を確保するためのルールです。
(FDルールに関する金融商品取引法の規定)
上場会社等またはその役員、使用人等が、その業務に関して、取引関係者に当該上場会社等の重要情報の伝達を行う場合には、当該上場会社等は、当該伝達と同時に、当該重要情報を公表しなければなりません。(金融商品取引法 第27条の36 第1項)
(取引関係者とは)
「取引関係者」とは、以下の者をいいます。
①金融商品取引業者等またはその役員等(証券会社、アナリストなど)
②当該上場会社等の投資者に対する広報に係る業務に関して重要情報の伝達を受け、当該重要情報に基づく投資判断に基づいて当該上場会社等の上場有価証券等に係る売買等を行う蓋然性の高い者(機関投資家等)
(重要情報とは)
「重要情報」とは上場会社等の運営、業務又は財産に関する公表されていない重要な情報であって、投資者の投資判断に重要な影響を及ぼすものをいいます。
「重要情報」の範囲は、インサイダー取引規制の「重要事実」よりも広く、その内容は以下のとおりです。(フェア・ディスクロージャー・ルール・タスクフォース報告)
①インサイダー取引規制における「重要事実」
②「重要事実」以外の情報のうち、発行者又は金融商品に関係する未公表の確定的な情報であって、公表されれば発行者の有価証券の価額に重要な影響を及ぼす蓋然性があるもの
(公表とは)
すでに述べたとおり、上場会社やその役員、使用人等がその業務に関して、取引関係者に重要情報を伝達する場合には、上場会社等は、当該重要情報を伝達と同時に公表しなければなりません。
FDルールにおける重要情報の「公表」の方法は以下のとおりです。
FDルールの公表 |
(参考)インサイダー取引規制の公表 |
①EDINETによる公開 |
①EDINETによる公開 |
②2以上の報道機関への公開 (12時間以上経過) |
②2以上の報道機関への公開 (12時間以上経過) |
③TDnetによる公開 |
③TDnetによる公開 |
④自社のウェブサイトに掲載する方法 |
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(公表が不要な場合)
取引関係者に重要情報を伝達する場合であっても、取引関係者が重要情報について守秘義務を負い、かつ、上場会社等の有価証券の売買禁止義務を負っている場合には、公表は不要です。(金融商品取引法 第27条の36 第1項 ただし書)
関連項目:内部者取引