「公開会社」という言葉は、「株式を公開している会社=上場会社」という意味で用いられることがありますが、本項では、会社法における「公開会社」について説明します。
(会社法における「公開会社」)
「公開会社」とは、「その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社」をいいます。(会社法 第2条 第5号)
(注1)「株式の譲渡による取得につき会社の承認を要する旨」を「(株式の)譲渡制限」と呼ぶことがあります。
(注2)「その発行する全部について、定款で「譲渡制限」の規定を設けている株式会社」は、「公開会社でない会社」、「非公開会社」、「譲渡制限会社」「閉鎖会社」などと呼ばれます。
株式会社の株主は、保有する株式を自由に譲渡することができます。(会社法 第127条)
これは株式会社が「所有と経営の分離」を前提としており、誰が株主であるかは問わず、むしろ株式の譲渡による投下資本の回収を容易にすることにより、大規模な資金調達を可能にするという考え方によるものです。
しかし、小規模の株式会社では、誰が株主であるかが経営に重要な影響を与える場合があります。
このような場合に会社は、予定しない株主の変更を防ぎ、経営の安定化を図るために、定款で「株式の譲渡による取得につき会社の承認を要する旨」を定めることができます。(会社法 第107条 第1項 第1号、第108条 第1項 第4号)
(法律上の取扱いの差異)
上記のように「公開会社」は、会社の経営とは関係の薄い多数の株主を、「非公開会社」は会社の経営と関係の強い少数の株主を想定しています。
そのため、「公開会社」と「非公開会社」では、会社法での取扱いに一部差があります。
(参考)公開会社と非公開会社の会社法での差異の例(概要)
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非公開会社 |
公開会社 |
発行可能株式総数の増加数の制限 |
制限なし
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発行済株式数の4倍 会社法 第113条 第3項 |
新株式等の募集事項の決定 |
株主総会 第199条 第2項 |
取締役会 第201条 第1項 |
株券の発行 |
株主から請求があるまで発行しないことができる 第215条 第4項 |
遅滞なく発行
第215条1項~3項 |
株主総会の招集通知 |
株主総会の日の1週間前(取締役会設置会社。書面または電磁的方法による議決権行使について定めた場合を除く) 第299条 第1項 |
株主総会の日の2週間前
第299条 第1項 |
取締役会の設置 |
他の条件による
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強制 第327条 第1項 第1号 |
監査役の設置 |
他の条件による |
強制(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は除く) 第327条 第2項 |
取締役の任期 |
選任後 最長10年
(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は除く)
第332条 第2項 |
選任後2年以内 監査等委員会設置会社(監査等委員 である者は除く) 1年以内 指名委員会等設置会社 1年以内
第332条 第1項、第3項、第6項 |
監査役の任期 |
選任後 最長10年 第336条 第2項 |
選任後4年以内 第336条 第1項 |
関連項目:非公開会社